― 納棺の旅支度を大切にする理由 ―

納棺の儀式では、故人様に足袋と草鞋(わらじ)を履いていただき、脚絆(きゃはん)や手甲(てっこう)などを身につけ、旅支度を整えます。
これは、亡くなった方があの世へ旅立つための装いとして、昔から受け継がれてきたものです。地域や宗派によって作法に違いはありますが、この地域でも長く行われてきました。

神式の場合にも、足袋と草履(ぞうり)を履いていただき、神衣を身につけていただきます。

近年、この納棺の儀式を行っていると、

「結ばなきゃダメかい?」
「ここの葬儀場はちゃんと縛るんだな」

というお声を聞くことが増えてきました。

詳しく聞いてみると、どうやら他地域では、足袋や草鞋を実際に履かせたり、脚絆や手甲のひもを結んだりせず、故人様の上に乗せるだけにしている葬儀社も増えているようです。

どうりで、

「久しぶりに丁寧な納棺を見たな」
「丁寧な納棺、ありがとうございます」

そんなお言葉をいただくことが増えたわけです。

とはいえ、実際に足袋や草鞋を履かせ、ひもを結んでいただくのはご遺族です。
私たち葬儀社は、ひもの回し方や結び方をお伝えしながら、そのお手伝いをする立場です。

確かに、旅支度で行う「縦結び」は、ひもをどのように回すのか知らなければ最初は戸惑います。しかし、何度か練習すれば覚えられるものです。

つまり、この作業を省略したところで、私たち葬儀社の負担が大きく減るわけではありません。

「どうせ形だけだから」とおっしゃるご遺族がいらっしゃるのも事実です。もちろん、お考えはそれぞれですから、無理にお願いするものではありません。

ただ、私たち葬儀社の側から、

「今はそこまでしなくてもいいですよ」
「上に乗せておけば同じです」

と、安易に省略してしまうことは違うと考えています。

葬儀の形は、時代とともに変わっていきます。

それでも、昔から続いてきたものを「面倒だから」「形だけだから」という理由だけで、葬儀社の側からなくしてしまいたくはありません。

なぜこのような旅支度をするのか。
なぜ足袋や草鞋を履かせるのか。
なぜひもを結ぶのか。

まずは、その意味や昔からの作法をきちんとお伝えする。
そのうえで、大切な方をあの世へ送るにあたって、ご家族が「できることはちゃんとして送ってあげられた」と思える納棺のお手伝いをする。
そして、この地域で受け継がれてきた葬送の文化を、次の世代へ伝えていく。

それも、地域の葬儀を担う私たちの大切な仕事だと考えています。